アルメニア国際設計コンペ
カナダ国立ケベック美術館増築コンペ

アーバンシェッド国際デザイン・コンペ
香港の珠海学院キャンパス・コンペ
新ロッテルダム市庁舎コンペ/OMA
大連サッカー・スタジアム・コンペ/UNスタジオ

カイロ・エキスポ・シティ・コンペ/ザハ・ハディド・アーキテクツ

ポン・ディッシュー周辺の再編成プロジェクト・コンペ/長谷川逸子・建築計画工房



アルメニア国際設計コンペ
新井清一氏(アライ・アーキテクツ)

京都精華大学建築学科のプロフェッサー・アーキテクト新井清一氏が,アルメニアの首都エレバンで開催された「アルメニア国際設計コンペ」で最優秀賞を受賞した。登録総数1145件,応募総数275チーム。ファイナリスト6チームの中から新井氏が選出された。
計画内容は,敷地面積5ヘクタール。延床面積約300,000平米に,高さ90mのレジデンス棟をはじめ,101mのホテル,20mのオフィス,ビジネス・センター,商業施設などを含む巨大な複合施設。敷地は市街を一望する丘の上にあり,アララト山が景色の一部として入ってくる特別な場所。これらの環境条件から,建物は音楽のコンポジションのように,建築とランドスケープ,内部の延長,外部の介入などのインタラクティブな関係を,空間的に融合させながら構築したデザインである。建築の存在と,広場,リズミカル・ガーデン,修景ガーデンなどと,アララト山を借景の一部としたシーンの演出が特徴だ。建物(レジデンス棟)の特徴は,すべての部屋が南方向,すなわち市の中心部およびアララト山を視野に納めることを前提として計画された。そのため建築形態が,ライン川のような曲線を描いている。3〜4年後の完成が予定されている。






カナダ国立ケベック美術館増築コンペ
OMA

相変わらずコンペで強みを発揮しているOMAが、こんどはカナダのケベック美術館の増築コンペで勝利を収めた。OMAは重松象平とレム・コールハースのパートナーが率いるデザインチームが、国際的な5つの建築家チームから満場一致で選ばれた。OMAの増築案は、地下レベルで既存の3棟を連結しており、ケベックの目抜き通りであるグラン・ダレに面し、セント・ドミニク教会の横にある。デサインの狙いは、近隣公園に建物をインテグレートさせ、都市との新しいリンクを持つことであった。
上部へ向けて面積が減少していく3つの積層化されたギャラリー(50m x 50m:現代展示/45m x 35m:常設現代コレクション/42.5m x 25m: エスキモー展示)が、公園から街方向へ上昇していき、ドラマティックなキャンティレバーでグラン・ダレ方向に突出している。高さ14メートルのグランド・ホールが、大衆を新しい建物へ呼び込む。  
重松氏によれば、OMAの意図は都市に対してドラマティックで新しい存在を創造することであり、他方ミュージアムの近隣住民や既存のミュージアム群には敬意を表し、穏やかなアプローチを保持したい。カスケード形のギャラリー・ボックス群の最終的な形態は、サーキュレーションとキュレーションにおける明快性の創出によって、ミュージアム体験を高揚させる一方、十分な自然光をギャラリーに導入する。2013年秋の完成が予定されている。











アーバンシェッド国際デザイン・コンペ
ユン・ファン・チョイ

アーバンシェッド国際デザイン・コンペ(UrbanSHED International Design Competition)は,ペンシルヴァニア大学の学生の応募案が1等になり、ロウアー・マンハッタンに使用されることになり話題を呼んでいる。
このコンペはニューヨークの工事現場などで、歩道を行く人々を落下物などからプロテクトするための歩道の覆い(歩道小屋=Urban Shed)が,あまりにも醜いのでより美しいデザインを求めて行われた国際コンペ。28カ国より163件の応募案を集めたコンペの最優秀賞者,ユン・ファン・チョイの案は“アーバン・アンブレラ(都市の傘)”。傘の構造的なロジックを用いて歩道小屋をシンプルにしたもので,構造,オーナメント,ライティングなどを一体化している。現時点ではスティールを使用するか,アルミを使用するかは決めていないようだが,屋根を支持する構造体は湾曲アーチを採用し,その下側にはアーケード風の空間を意図しているようだ。夜間の照明にはLEDを使用。屋根には半透明グラスファイバーを用いて種々の色やアートをつけたバージョンをつくり,自然光を歩道に落とすことを計画している。
現在ニューヨークでは6,000箇所で醜い歩道小屋が軒を連ねており,その長さは300km以上になるという。チョイは10,000ドルの賞金を獲得し,ダウンタウン・ニューヨーク連盟が基金を出してロウアー・マンハッタンに原寸大のプロトタイプをつくるという。建設会社はその使用を強制されないが,ニューヨーク市当局は,単に歩行者やビジネス・オーナーが喜ぶだけでなく,メンテナンス費も安いことも指摘しつつ,徐々に使用されていくことを期待している。



ブロードウェイ界隈でのアーバン・アンブレラの使用例全景

LEDを使用した歩道夜景


夜景

カフェで使用した場合の美しい店頭風景

ブルックリン界隈。
天井がカラフルで非常にアート的だ

All the images: Courtesy of Agencie Group
Urban Umbrella design by: Young Hwan Choi with Andr市 Cort市 AIA, Sarrah Khan PE of Agencie Group
Project Team: Will Robinette, Todd Montgomery, Zachary Colbert


香港の珠海学院キャンパス・コンペ
OMA

レム・コールハース率いるOMAが,またまたアジアで大活躍。OMAはレイ&オレンジ・アーキテクツと組んで香港新界の珠海学院大学部のキャンパス・コンペに勝利した。このキャンパス計画は,1947年創立の珠海学院に新しい敷地と新しいアイデンティティーを与えるものだ。延床面積28,000Fの建物には,芸術,科学&エンジニアリング,およびビジネスの3学部が入り,合計で10学科とふたつのリサーチ・センターが入ることになっている。
珠海学院は伝統的に,学際的かつ広範囲にわたる教育に力を入れており,4年制で4,000人の学生を擁している。それに対応したOMAのデザインは,異なる学部の学生同士の出会いを助長する共通スペースをふんだんに取り入れたもの。OMAは並行する2棟の校舎を,彼らが“マット”と呼ぶ2棟間の基壇(教育的&社会的施設を内包)で連結している。8階建ての各棟は,教育,スタジオ,オフィス用にフレキシブルなスペースをもっている。構造的で透明感のあるファサードは,ヴィジュアル・ユニティ(視覚的統一性)をキャンパスに与え,お互いの建物内部の活動を見たり,また周囲の美しい景観を視野に納めることができる。
建物2棟を連結するマットの内部には,図書館,カフェテリア,ジムおよびシアターが配されている。マットの上部には,教育・社会施設間のサーキュレーション・システムとして機能する階段,プラットフォーム,ランプが変化に富んだデザインで存在し,それらの影の部分に種々の機能が巧みに配されている。決定的なこと,このランプは丘のスロープに一致しており,新しいキャンパスをランドスケープのなかにしっかりと定着させている。
建物は自然換気が最大になるよう配置され,エアコンの使用を通常より15〜30%も減少させるサステイナブル・デザインだ。国際的な8チームの応募案の中から選出されたOMA案は,珠海学院へ強いヴィジュアル・アイデンティティを与え,学際的な教育に対してのフレキシブルな使い勝手や環境主導型のデザインがアピールして選出された。



透明感のある2棟間の“マット”と呼ばれるサーキュレーション・スペース


円形開口部がモチーフとなったデザイン

マット空間を見下ろす。
階段やスロープの裏側に図書館,カフェテリア,シアターがある

(Photos: courtesy of OMA)


新ロッテルダム市庁舎コンペ/New Rotterdam City Hall Competition
OMA

OMAの地元,ロッテルダムの新しい市庁舎コンペは,ドイツのエンジニア,ヴェルナー・ゾーベックと組んだOMAが勝利した。
「新ロッテルダム市庁舎」は,市庁舎機能はもちろんのこと,その他にもオフィスや集合住宅を含んだコンプレックスとなる。OMAパートナーのレニエ・デ・グラーフとレム・コールハースによるデザインは,5社のオランダ建築家チームの中から選出された。審査員によると,“OMA案は周辺コンテクストに対するイノベーションとサステイナビィティの完璧なコンビネーション”という評価であった。
OMA案は,ユニットの集合によるモデュラー・ビルディングであり,ユニット群は上部にいくに従いセットバックして,最終的にはふたつの塔に集約される。小さなセル(ユニット)による建物のコンポジションは,ロッテルダムのメイン・ストリートであるクールシンゲルから見ると,印象的な集合形態を見せ,また隣接の1950年代の旧市庁舎ビルに,巧妙な適応性で接続している。
OMAが用いた斬新な構造システムは,最大の効率と万能性を可能にしている。時間の経過による建物機能の変化に応じて,ユニットの増減が可能なのだ。それはオフィスや集合住宅にも適応できるというフレキシビリティをもっている。
上層階のグリーン・テラスは,ロッテルダムという大都会の中心部で庭付きのアパートメントに住めるという可能性を持っている。また夏期の暑い空気を貯蔵して冬期に使用し,またその逆もすることで,一定したマイクロクライメイト(内部気候)を維持できる。さらに建物のガラス・ファサードに使用されたハイテクな半透明インシュレーションなどによって,「新ロッテルダム市庁舎」はオランダ随一のサステイナブル・ビルディングという折り紙をつけられた。
レニエ・デ・グラーフは,「このデザインはロッテルダムにおける次世代の最高作品というよりも,むしろ部分的にはひとつの建物であり,部分的にはひとつの都市的状況であり,部分的にはそれ自身のスカイラインなのです」とコメントしている。



ユニットの集合形態が見せる洗練されたファサード


2塔のタワー構成であることを示すフレーム・モデル

(Photos: courtesy of OMA)



大連サッカー・スタジアム・コンペ/Dailen Football Stadium Competition
UNスタジオ/UN Studio


近年富に国際的な活躍が目立つオランダのUNスタジオが,中国,大連に建設予定のサッカー・スタジアムの国際コンペに勝利した。このスタジアムは,中国スーパーリーグにおける強豪大連シーデFCのホーム・グラウンドになる。大連は中国北東部に位置する人工570万人の大都市で,商工業および観光の重要な都市で,中国北東部最大の港町である。
広さ38,500平米のスタジアム・デザインは,カラフルな竹を層状にしてつくられた古代中国のサッカー場に啓発されたという。そのデザインは,パブリック領域と建物のアーバン・コンテクストに,観覧者の集団精神をおりこんだもの。メイン・スタジアムには40,000人の観覧席をはじめ,テレビ放送センター,管理部門,VIPラウンジ,選手施設,コンコースなどが,地上に展開する層状のエンヴェロップに納められている。それによって,デッキ状になったパーキング施設上部に,アウトドア・パブリック・エリアを生み出している。その他144,000平米の敷地には,ふたつのトレーニング・フィールドが併設される。
スタジアムそのもののデザインは,古代中国サッカー場からの引用を,ダブルのルーフ・ストラクチュアに応用している。この2重のストラクチュアはダブル・コンコースのエンクロージャーとなり,スタジアム後方部分を円形状に囲っている。ラティス・ストラクチュアによる幅広い帯状の外壁のスプリットや開口部から,外部への見通しや,外部から内部への見通しが可能になる。



夜景俯瞰CGパース


完成スタジアムCGパース

全景模型


コンセプト・ダイアフラム

3D断面パース

(資料提供:UN Studio)



カイロ・エキスポ・シティ・コンペ/Cairo Expo City Competition
ザハ・ハディド・アーキテクツ/Zaha Hadid Architects


特に近年,ザハ・ハディドが国際コンペで勝利する確率は非常に高く,国際的な建築家のなかでも断トツのコンペ強さを誇っている。「カイロ・エキスポ・シティ」は,ザハ・ハディドがグローバルなマルチ・エンジニアリング事務所のビューロ・ハッポルト社と組んで勝利したコンペ作品である。
エジプトの首都カイロにある45万平米の敷地は,カイロ中心部とシティ・エアポートの中間に位置している。「エキスポ・シティ」は先端的な見本市会場と国際会議の都市で,国際的な展示場,会議場,およびビジネス・ホテルに加え,オフィス・タワーとショッピング・センターが提案された。
ザハのうねるような流体的なフォルムは,ナイル川渓谷のナチュラル・トポグラフィ(自然景観)に想を得たものだと言う。展示スペースが最大のフレキシビリティを必要とすることから,すべてのパブリック・スペースや形態的な構成は,周辺にあるエジプトのランドスケープを参照したいとザハは考えた。その結果,「カイロ・エキスポ・シティ」には,ナイル川がもつ力強いダイナミズム,周辺の建物群,トポグラフィックなランドスケープなどが反映されている。
コンペは第2段階でノルウェーのスノヘッタとファイナリスト2チームになり,ザハ・ハディド事務所が最終的な勝利を納めた。今年の10月から敷地の造成が始まる予定だ。





(資料提供:Zaha Hadid Architects)



ポン・ディッシュー周辺の再編成プロジェクト・コンペ
最優秀賞:長谷川逸子(長谷川逸子・建築計画工房)

このコンペはパリ郊外の「ポン・ディッシー周辺の再編成プロジェクト」で,フランスの女性建築家フランソワーズ・レイナード(LAA代表)と組んでの勝利であった。レイナード氏は元ジャン・ヌーヴェル事務所のスタッフで,「電通タワー」建設時には担当で何回も来日した親日派。プロジェクトは延床面積約20万Fで,オフィス・タワー,住宅,商業施設・学校,パーキングが含まれる大型プロジェクトだ。
敷地はパリ南西部のセーヌ川沿いに美しい緑が広がっている場所で,建物は緑の中に根を張った「キノコ」が上空へ伸びていく様をイメージしたものだという。これは長谷川氏が今まで実践してきた「身体建築」,すなわち風,水,光,緑などの自然エネルギーをパッシブに活用したエコ建築だ。また周辺にランドスケープ・デザインによって遊歩道なども組み込み,全体としてランドスケープ・アーキテクチュアをイメージしている。オフィス用のタワーは延床14万Fに及ぶ。3つのブロックに分節された高さ196mの超高層タワーと,2つに分節された139mタワーからなる。長谷川氏は「超高層で働く人々のために,精神的に安定できるよう第2の大地としての空中庭園をつくった」という。審査では「21世紀に相応しい環境をテーマとした新しい都市美の提案であり,未来を感じ取れる作品」と評価された。
2007年4月からスタートしたコンペには世界から多数が参加し,履歴の審査が行われた。2007年5月に行われた第1回インタビューには5組が残り,基本設計に近いものが要求された。2008年7月に行われた第2回インタビューに残ったのは3組。審査委員長はIssy les Moulineauxの市長,アンドレ・サンティーニ氏で,審査員は国と隣接の市の市長および行政関係者,フランスの建築家,エンジニアなど多数で構成されていた。



最終案

コンセプト
新しい都市環境:セーヌ川沿いの緑の多い特別な敷地に単なる土地利用計画ではなく,敷地の性能をより高める,新しい都市として編集を行う。その全体の景観はセーヌ川沿いに根を張り,段々に空中へ,キノコのような建築が伸びているイメージになっている。建築は風,水,光,緑などのパッシブ自然エネルギーでつつまれているエコ建築である。敷地に非常に高密度の要望プログラムを複合させた建築を提案し,地域の人たちに開かれた魅力ある場所をここに立ち上げる。提案する環境都市は気象や時間の変化をも織り込んだアノニマスでアモルフな異種混合のフィールドと考える。
ランドスケープ・アーキテクチュア:タワーは25mレベルからはじまり,グランドレベルを活気ある場所にするため開放し,複数の建築空間が連結して一体となるような環境的な新しい都市美を立ち上げる。タワーで道路をはさんで北側に文化的,芸術的都市のイベント空間があり,南側に太陽光のあふれるレストランやカフェ,さらに賑わう通りに面してショッピング街を展開する。リズミカルな回遊ネットワークを張り巡らせ,周辺の環境へと繋がっていき,公共交通の駅からオフィス,ショッピング街,住宅にもアクセスできる遊歩道を導入した。遊歩道は全体を映像のように映し込むガラスと緑のパーゴラで覆われていて,駅とセーヌ川を繋げる。セーヌ川沿いの大木は残して,ここに全体をランドスケープ・アーキテクチュアといえる新しい都市の環境を提案した。


第1次案

(資料提供:長谷川逸子・建築計画工房)